２０２０年から始まった感染症対策により、家で過ごす時間が長くなりました。なんとなく気持ちがふさぎがちになっている方もいらっしゃるかもしれません。そんな気分を変える力をお庭は持っています。バイオフィリアという言葉をご存知でしょうか？バイオ（生命・自然）フィリア（愛好）という意味を持つ造語で、人間は本能的に自然のある環境を好むという性質を表したものです。バイオフィリアに基づくと、人はかつて暮らしていたサバンナのような、地平を認識できて樹木が点在している環境に安心感を覚え、逆に自然とかけ離れた環境では、ストレスを感じると考えられます。サバンナのような環境に身を置くことは難しいかもしれませんが、自然を感じられる要素をお庭から得ることは可能です。樹木や草花、太陽の暖かさや雨の冷たさ、風の心地良さ。庭から得られる自然はたくさんあります。家をストレスの無い安心できる場所にするためには、自然を感じられる庭の存在が不可欠なのです。
実際に従業員のストレスを緩和し、生産性を向上させるため、バイオフィリアの概念を取り入れたオフィス作りを進めている企業も増えています。在宅ワークも増える中、庭も含めた快適な住環境づくりが求められています。
緑視率（人の視界を占める緑の割合）による集中力の変化について実験した研究では、緑視率が１０～１５％の時に最もストレスが軽減され集中力が増すという結果が得られたそうです。窓の外から庭の緑が見えることで、ちょうど１０～１５％程度の緑視率になりそうですね。在宅ワークはもちろんですが、子供の学習面でも集中力は重要です。視界に緑が入ることで、食事がよりおいしく感じられるという研究結果もあります。食事時間の充実は、家族の仲をより深めてくれるはずです。
また植物が持つ香りもリラックス効果を持ちます。特に樹木が持つ揮発性物質はフィトンチッドと呼ばれており、この香りをかぐと血圧が低下したり、脈が安定したりする効果があります。例えばヒノキ風呂ではヒノキの良い香りを感じますよね。これはヒノキが持つフィトンチッドの香りです。花やハーブの香りも、やはり私達をリラックスさせてくれます。庭に緑があれば、ふと感じられる香りからも良い効果が得られるのです。
忙しい日々の中、手がかかるものはなるべく少なくしたいという思いから、庭に緑はいらないという方もいらっしゃいます。しかし、ただ見栄えだけでなく、庭の緑は私たちにたくさんのものをもたらしてくれます。生活を豊かにしてくれる庭づくりを植栽から考えてみませんか？次回のコラムでは庭を構成する植栽の種類についてご説明します。
